世界のそば文化

福井県越前の「越前そば」など日本料理として広く親しまれている蕎麦ですが、そば粉を使った料理は、実は世界でも食べられています。

蕎麦を麺状にして食べる国には、フランス、イタリア、中国、北朝鮮、韓国、ブータン、ネパールなどがあります。麺状にする方法は各国で異なりとても面白い特色があります。

また、世界では麺以外でも団子状にしたり、腸詰めにしたり、茹でるだけでなく焼いて食べたりするなど様々な調理方法でそばが調理されています。

○フランス

・ガレット

日本でもおなじみのガレット。フランスの、特にブルターニュ地方では郷土料理としてそば粉のガレットが人気で食べられています。フランス語の「ガレ(galet)」には「小石」という意味があり、それが派生して丸く平たい料理やパンケーキなどを総称して「ガレット」と呼ぶようになりました。ガレットの歴史はとても古くフランスでは13世紀頃から食べられていたそうです。元々ブルターニュ地方は日照時間が短く土地が痩せていたことから、小麦の栽培に向かない地域でした。そのため、土地と気候に合ったそばの栽培が盛んになり、そば粉のガレットがパンに変わる主食として親しまれてきたのです。そば粉、ミルク、鶏卵、ビールを撹拌したものを、熱してバターを入れた平なべで焼きます。ハムやチーズをクレープのように包んだり、それにトマト等を加えた食べ方が最もポピュラーでオリーブ油を混ぜる場合もあるようです。今現在でも専門店や一般家庭において日常的に食べられている郷土料理です。本場フランスでは、シードルというりんごの発泡酒と一緒にいただくのが定番のようです。ジャムやキャラメルソースを使った甘いガレットもあり、食事からスイーツまで幅広い楽しみ方ができるのも魅力のひとつです。

・ブリニ

ブリニはロシア料理で、そば粉入りのパンケーキです。元は、ロシアのブルヌイという料理をルーツとする蕎麦料理から伝わり、そば粉に牛乳と溶かしバターを加えて作りますが、クレープのように薄く焼くこともあります。デザートとしては、フルーツ、ジャム、ハチミツ、カスタードクリームなどが使われ、食事として食べるときは、チーズ、ゆで卵、ハム、サーモンなどをのせて食べます。特別な時は、イクラやキャビアなどと食べられています。

○イタリア

・ピッツォケリ

イタリア最北部のヴァルテッリーナで食べられている郷土料理で、そば粉が混合されたパスタです。日本の二八蕎麦とほぼ同じ生地で作られます。なので、見た目や味は日本のそばとよく似ています。平たい形で、長さは10センチ程度の短いパスタです。チーズやバターのソースであえて食べます。

・シャット

角切りにしたチーズにそば粉の衣をつけて揚げた料理です。ピッツォケリと同じヴァルテッリーナの郷土料理です。ヴァルテッリーナ地方はスイスの国境付近に位置する場所で、ここでは寒冷地でも育つ蕎麦の栽培が昔から盛んでこの地方の料理には蕎麦粉が欠かせない存在でした。そばの衣をたっぷりつけて揚げると油の中で、形が変わり手足がついたように見えます。これがヒキガエルに見えるということから、ヴァルテッリーナの方言でヒキガエルという意味であるシャットと名付けられました。

○スロべニア

・カーシャ(クラクフカ)

そばの実を炒ってオーブンで焼いたおじや料理です。カーシャがスラブ諸語でお粥を意味します。庶民の味として親しまれていて、ポーランドのかつての首都、クラクフの最後の女王の好物でもありましたが、これはバニラやレーズン、レモンの入ったお菓子風の調理で、女王の誕生祝いの食卓をも飾った由緒ある料理です。

・ジガンツィ

そばがきのような伝統的な郷土料理です。塩味のついた沸騰水に、そば粉をそのまま入れます。水分をある程度除いて、塊にし、器に盛りつけ、スープ、ミルク、等と供に提供されます。

○ロシア、ウクライナ、東欧諸国

・ブリヌイ

ロシア、ウクライナで食べられている料理で、蕎麦粉が使われて作られることがあります。スメタナやキャビアをのせて食べます。現地では、冬の感謝祭の時期によく食べられているようです。

・そばの実のカーシャ

カーシャはお粥やピラフ状の食べ物のことです。ピロシキやクニッシュなどに詰めて食べられることがあります。

○ネパール

・ディロ(ディード)

蕎麦がきの様な料理で、主食として唐辛子やカレーなどと一緒に食べます。

・ロティ

そば粉のお好み焼きにあたる料理で、そば生地を熱湯の中に韓国の冷麺のように押し出して食べたり、生地を油で揚げてお菓子にして食べている料理です。

○韓国、北朝鮮

・冷麺

日本でも食べられている冷麺は朝鮮半島でそば粉を主原料として作られることがあります。麺をところてん式に押し出して作ります。マッククスと呼ばれる江原道の郷土料理はそば粉を使われて作られ、こちらは冷麺の一種です。

・平壌冷麺

韓国では、日本と同様にそば切りの起源が17世紀ごろで、18世紀中頃からそば粉を使って麺が食されているのが平壌冷麺で、季節を問わず食べられているそうです。そば粉を使って麺とトンチミという大根の水漬汁を元にしたスープと味付けした豚肉の細切りや野菜、ゆで卵、フルーツなどと一緒に食べる韓国冷麺です。

・メミルムク

そば粉を水につけて取り出した澱粉で作った、くずもちに似た食品です。朝鮮半島の料理です。タレをつけて食べたり、和え物にしたりします。

・メミルチョンビョン

そば粉を水で溶いてクレープ状に薄く焼き、野菜、肉、キムチなどを包んで食べます。

・メミルプチムゲ

そば粉で作られたチヂミのことです。ちなみに、メミルは韓国語でそば粉を意味し、蕎麦はメミル・モミルと言います。

○中国

・ヘロ(ヘイロ)

内モンゴル地方の押し出し蕎麦で、ヘロ麺とも呼ばれます。ヘイロという機具を使って練ったそば粉をうどん程の太さに押し出し、具材の入ったスープをかけて食べる、内モンゴルのお袋の味ともいえる料理です。スープや具材は、各家庭によって千差万別で代表的な家庭料理です。

・モルンチフ

モルンは猫、チフは耳という意味なので、猫の耳という名前の料理です。その名の通り練った蕎麦をちぎって猫の耳ほどの大きさに伸ばして茹でて食べます。ヘロと同様に具材入りのスープをかけて食べます。

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